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片山法律事務所

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あるとき突然兄弟姉妹から数千万円を超える請求が来たら!?【予防編】

終活のトラブル

突然1000万円を超える請求が来たところで,返すお金があるはずがありません。

仮にお金があったとしても,ろくに親の世話もしなかった兄弟姉妹から突然お金の請求が来て,心中穏やかなはずはありません。そうとう感情的に激しく対立する事案になることは目に見えています。

もっといえば,裁判を受けて立つこと自体がお金も時間もかかって大変なことです。

万が一,お金の面が解決したとしても,親族関係は崩壊し,もはや子供の頃のような仲の良い兄弟姉妹に戻れるはずがありません。

被相続人であるAさんも,草葉の陰で嘆いているでしょう。

 

このような悲劇的な結末を迎える前に,どうすればよかったのでしょうか。

大きく分けて2つの方法があります。

一つめの方法は,使途不明金を出さないようにすることです。預かったお金と自分のお金を峻別し,Aさんのお金はAさんのために使って他の用途には一切使用しない一方,CさんがAさんのために自腹を切るようなこともしません。

例えば,お買い物にいったついでにAさんの服や食べ物などを買う場合には,Cさんのためのお買い物とは別にレジを通して別レシートで管理した上で,正確に家計簿をつけ,証拠としてレシートを一つ残らず残しておくことです。同じレシートに入ってしまった場合には,マーカーで塗ってどれがAさんのものかを区別しておくこともいいでしょう。

当事務所では,一冊のノートを買い,そこに記帳した上でレシートを貼っていって一元管理することをおすすめしています。

しかし,なかなかこれを実践できる人はいません。だいたいは,自分のお金をごっちゃまぜになっています。

 

二つめの方法は,そもそも,親といえども他人のお金を預からないことです。

Aさんが認知症になって施設に入所する際に,Cさんが家庭裁判所に申立を行い,第三者の弁護士などの専門家を成年後見人(保佐・補助を含む。)に選任してもらい,成年後見人がAさんのお金を管理していれば,使途不明金は発生しませんでした。

成年後見人は,家庭裁判所の監督を受けながら被後見人の財産を管理します。善管注意義務を負い,万が一成年後見人が使途不明金を出していれば,成年後見人が損害賠償義務を負います。責められるのはCさんではなくなるということです。

第三者に全く親のことを任せるのはちょっと・・・という場合には,身上監護はCさんが,財産管理は専門職後見人(弁護士)が,というような複数選任(このように権限分担することを権限分掌といいます。)の形態もあります。特に権限の分掌をせず,2人が共同で成年後見人になる場合もあります。

専門職の成年後見人には,報酬が発生します。報酬額は家庭裁判所が決め,後見人が自分で決定するものではありませんので,そう法外な金額にはなりません。報酬額は,年に1回を目処に裁判所に後見事務の報告をすると同時に報酬付与審判を申し立てます。

金額は,基本報酬としてだいたい月額2~5万円,さらに特別に何らかの行為をしている場合には特別加算があるという計算です(財産額,1年間の活動内容により増減します。)。

過去に私が講演会などで成年後見のお話をすると,受講者の方の声で,報酬がかかることが成年後見人の選任に消極的な最大の理由のようです。

しかし,それは,後の親族間のトラブルを未然に防ぐためのコストと考えられないでしょうか。

一人っ子で,法定相続人が一人しかいないのであれば,ここまでする必要はありません。しかし,法定相続人が複数存在する場合,紛争のリスクはゼロではありません。「絶対にうちの争続にはならない!」と思われてる場合にはいいのですが,後で見込みが外れるというのはよくあることです。

いったん親族間で訴訟までやってしまえば絶縁状態になるのは明らかで,一生どころか,次の世代にわたって禍根を残します。

自分の財産のことでこどもたちに迷惑をかけたくない方,ご両親や兄弟姉妹の財産を管理する役割になったが他の親族とトラブルにしたくないという場合には,紛争を未然に防止するために,成年後見任の選任をご検討ください。

当事務所では,成年後見人選任の申立を積極的に行っています。ぜひご相談ください。