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片山法律事務所

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あるとき突然兄弟姉妹から数千万円を超える請求が来たら!?【問題編】

終活のトラブル

ここ数年,よく目にする終活にまつわる案件として,使途不明金の問題があります。当事務所でも,ここ数年は常に何件かはこの種の案件があります。とても悩ましい問題です。

 

簡単な架空の事例を作ります。

Aさん(85歳・女性・以下「母」)は,夫に先立たれ一人暮らしをしています。子どもはCさん(60代・女性・以下「姉」)とDさん(50代・男性・以下「弟」)の二人がいます。

姉も弟もそれぞれ世帯をもって独立していて,姉は夫婦と同じ下関市内に居住し,弟は東京に居住しています。弟は,もう20年以上里帰りもせず,実家には全くよりつかない上,電話の一つをよこすこともない断絶状態です。そこで,Aさん夫婦は,姉を頼りに生活してきました。

そんな中,母に認知症の症状がでてきて,一人暮らしは難しくなったため,介護施設に入所することになりました。

母は,施設に入所するにあたり,姉に預金通帳の管理を頼みました。姉は,お金の出し入れをして施設や病院の費用を支払うとともに,税金・介護保険料などの納付や,面会に行くにあたって好物の差入をしたり,服を買ってもっていったりしていました。弟は相変わらず面会にも来ませんし,何も音信はありません。

 

そんな生活が10年ほど続いたところ,母が死亡しました。死因は老衰で,100歳近い大往生です。姉は,弟に知らせましたが,弟は葬儀にも来ませんでした。

葬儀と四九日・納骨も終わり,姉は,ようやく両親を無事に見送ることができて,ほっとしていました。

 

それから半年くらい経過したころ,姉のところに,弟の代理人と名乗る東京の弁護士から内容証明郵便が届きました。母の遺産が3000万円あるはずなので,その2分の1の1500万円(法定相続分相当)を2週間以内に支払え,支払わなければ直ちに裁判所に訴訟を提起する,と言ってきたのです。姉は,びっくりして下関市内の弁護士に相談しました。

弁護士が姉から聴き取りをして,関係資料を見たところ,母の死亡時の預貯金は,100万円くらいしかありません。ほかには自宅土地建物はありますが,下関の中でも中心地から離れた市街化調整区域にあって,売ることも容易ではない場所です。固定資産税評価額も,建物は古いのでほぼ0円,土地は200万円程度です。

姉の財産は,預貯金100万円くらいしかありません。とうてい1000万円を超えるような大金を支払うことはできません。

3000万円はどこに消えたでしょうか。弟の弁護士は,何を根拠に3000万円と言ってきたのでしょうか。

被相続人が死亡後は,相続人が銀行で手続をすれば,被相続人の口座の有無及び過去の取引明細(金融機関の保存期間の関係で,過去10年分くらい。)を取り寄せることができます。弟の弁護士がそれを見て計算したところ,過去10年間に預金通帳から引き出された金額の合計が約3000万円だったのです。

消えた3000万円は姉が勝手に着服したものだから返せ,と言ってきたわけです。

 

少し難しいことを言うと,法律構成としては,不当利得返還請求,不法行為に基づく損害賠償請求,委任契約に基づく預託金返還請求権など,複数の構成が考えられます。

このような場合,法的な手続はどうなるのでしょうか。そして,その結論はどうなることが見込まれるのでしょうか。

 

【裁判編】に続きます。