40代、50代、60代の子どもがいないご夫婦へ。
「わたしたちには争う子どもがいないから、相続対策なんてしなくてもいいだろう」
このように、お考えではありませんか?
実は、子どもがいない夫婦こそ、相続対策が不可欠なのです。
今日はそんなお話です。
子どものいないわたしたちには無関係?
2023年の年末年始。
コロナが5類に引き下げられて、行動制限がなくなって久々の年末年始です。
ご実家に帰省される方も多いのではないでしょうか。
このタイミングで、ご両親の将来の終活、相続に備えた話をされる方も多いと思います。
実家の処分の話。
将来、施設に入るときの話。
ご両親の現預金の話、など・・・。
そんな中、「わたしたち夫婦には子どもがいないから、両親の相続の時は別だけど、自分たちの相続の時には相続対策なんてしなくていいわね」と、思っていませんか?
実はその考えは危険です。
子どもがいない夫婦こそ、相続対策、具体的には遺言を書いておく必要が不可欠なのです。
遺言がなければ、遺されたあなたの配偶者を守ることができないかも?
たとえば、あなたが亡くなったときに、あなたに兄弟姉妹や甥姪がいる場合です。
このとき、あなたの相続人は、あなたの配偶者と、あなたの兄弟姉妹、先に兄弟姉妹が亡くなっている場合には、その子どもである甥姪(おい・めい)も相続人になります(代襲相続人)。
いかがでしょう?
久々に行動制限がなくなったとはいえ、甥姪と会うことはありますか?連絡先は知っていますか?
現時点でさえ連絡先が分からない甥姪。
将来、この子たちが大きくなって、海外にでも行くようなことがあったらなおさら連絡を取ることができなくなるでしょう。
そんなときに、あなたが亡くなったとすると、
この甥姪も相続人になるので、あなたの配偶者の生活を完全に守ることがこのままではできないのですね。
金融機関は死亡を確認すると原則として口座を凍結してしまいますから、もしも夫婦二人分の財産を管理している口座が凍結されてしまったら、残された配偶者はとても困ったことになります。すぐに相続手続をしなければなりません。相続手続には、全相続人の署名押印が必要です。
自宅も、100%あなたの配偶者のものとは言えず、甥姪も相続する権利があります。
法律改正で配偶者居住権が認められましたが、代償金を支払う可能性がでてきます。つまり、残された自宅を配偶者のものにするために、兄弟姉妹や甥姪に一定のお金を支払う必要が出てきます。
このとき、甥姪に連絡が取れない場合はもっと悲惨です。
相続手続ができないのですから、銀行からあなたの配偶者があなたの現預金を引き出すことさえできません(法律改正により、一定の条件を充たせば預金の仮払制度を利用できます。)。
あなたの自宅に、あなたの配偶者が住むことは事実上できたとしても、その水道光熱費、毎年の固定資産税、そして日々の生活費。遺されたあなたの配偶者は、これらをどう捻出していけばいいでしょうか?
生命保険金の受取人を配偶者にしておけば一定の対応策となりますが、生命保険金以外の預貯金、不動産の問題は解決するわけではありません。
どうすれば、配偶者を守れるか?
そこで、遺言が効果を発揮します。
子どもがいない夫婦こそ、遺言を書いておくべきことになります。
なぜなら、兄弟姉妹、その代襲相続人である甥姪には遺留分がないからです。
つまり、遺言ですべての財産を配偶者に相続させれば、兄弟姉妹、甥姪には何らの財産を相続させないことができます。
遺言執行者の取決めをしておけば、金融機関の手続や不動産登記名義の変更にあたって、兄弟姉妹・甥姪の関与も不要です。
あなたに子どもがいない場合はもちろん、
あなたの兄弟姉妹、あなたのおじさん・おばさんの中に、子どもがいない夫婦がいる場合。
そんな時は、あなたの配偶者や、あなたの兄弟の結婚相手を守るという観点からも、
ぜひ、遺言を書くことを進言されてみてください。
子どものいない夫婦こそ、遺言は必須なのです。
遺言をどう書けばいいのか?
でも、その遺言。
インターネットで調べたところ、日本財団の調査によると、60~79歳で、すでに遺言を作成している人は、
なんと、3.4%(自筆証書遺言は2.1%、公正証書遺言は1.3%)ということです。
40代、50代となれば、もっと少ないでしょう。
本来は、関心は高いはずなのです。
私を含む弁護士がいわゆる終活講座の様な形で市民向けの講演をする機会もありますが、少なくない方が聴講され、熱心に聞かれていきます。
でも、講座を聴かれてから実際に弁護士に相談して遺言を作成される方は皆無といって過言ではありません。
なぜ日本人は遺言を作成したがらないかについて、いろいろな分析がなされていますが、ここでは割愛します。個人的には、言霊信仰説に近い意見を持っています。
形式はどうしたらいいのか、といった不安を聞くこともあります。
弁護士に相談する際には、形式は気にしなくていいでしょう。
中身の問題として、どのような内容を実現したいのかだけを決めてもらえれば、あとは弁護士の方で必要な文言を考え、条項として整えることができます。
例えば、
全財産を配偶者に相続させたい場合。
特定の財産は配偶者に遺すけど、特定の財産は、たとえば甥姪の将来のために遺していきたい場合。
それぞれの想いがあると思います。
そうした方向性を決めてもらえれば、最低限事足ります。
子どもがいない夫婦の場合、どちらが先にお亡くなりになるかは神のみぞ知ることですから、夫婦双方で相手に向けて書いておく必要があります。
さらに、配偶者が先になくなっていた場合に相続財産をどうするかも決めておくことがなおよいでしょう。
そして遺言はご存じの通り、厳格な形式を必要として、書き方を間違えてしまえばせっかくの遺言が無効になってしまうものです。
よほど緊急の場合を除き、できる限り公正証書で作成することが重要です。
あなたの配偶者を守るためにも。
一度、当事務所の法律相談をご利用ください。