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片山法律事務所

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「終活」は何をしたらいいのか?

終活

  「終活」は何をしたらいいか?

 

 

先日、とあるネット記事をみかけてびっくりすると同時に、ああやっぱりと思うことがありました。

2022年の山口県の高齢化率は、なんと全国3位だそうです。

参考までにベスト5を挙げると、

1位 秋田県

2位 高知県

3位 山口県

4位 徳島県

5位 島根県

だそうです。

下関で生活していて、肌感覚で高齢化が進んでいるなと思ってはいましたが、全国3位と聞くと暗い気分なってきます。

 

年齢を重ねると、身体的な問題の他にも、判断能力の低下の問題も生じてきます。

悪質な業者が高齢者の家に入り込み,高額な金融商品や不必要な羽毛布団を大量に買わせるといった消費者被害や、振り込め詐欺の事件のニュースはいまだに続いています。

このようなときに,高齢者の財産を、誰かが適切に管理していれば,被害を防ぐことができたかもしれません。

 

どうすれば、このような事件を防ぐことができるか。

ここでは、高齢者をめぐる法的な問題として、①平穏な老後をどう送るか、②遺族に財産をどう残すか(相続)という問題がある中で、①について考えていきましょう。

 

 

平穏な老後を送るための障害となるのは、2つです。

1つは身体的な不都合で,これは介護の問題になります。

もう1つは判断力が衰えた場合に財産を適正に管理できなくなることで、誰かが本人になりかわって財産を管理する必要があります(財産管理)。

 

 

人間も生物である以上,たとえ若い頃にどんなに元気な人であったとしても、年齢による衰えは避けられません。そのようなリスクがあることを認識し、元気なうちから適切なサービスを利用することで安心できる生活を送っていただきたいと思います。

 

 

その安心できる生活のために、法的な対策として利用することができるのが、いわゆる「4点セット」です。

 1 財産管理契約

 2 任意後見契約

 3 遺言

 4 死後事務委任契約

 

この4つの契約を合わせて公証人役場にて公正証書で作成すると安心というわけです。

 

 

では、この4点セット。

どのように作成していけばいいのでしょう?

 

 

1 顧問契約(ホームロイヤー契約)

 

4点セットにご本人の意思を反映させるには,継続的にお客様のご要望を聴き取り,人生観,価値観といった内心のことから,お墓がどこにあるか,その宗教は何か,ご葬儀はどの程度の規模で行いたいかといった祭祀のこと,財産がどこにどれくらいあるかといった財産面のことなど,挙げればきりがないほど多くのことを個別的に、正確に把握しなければなりません。

 

そのためには,弁護士が1回1時間程度1,2回面会すれば足りるようなものではなく,数ヶ月から数年にかけての継続的な関与が必要です。継続的に関与する中で、相互に信頼関係を築くとともに、ニーズを正確に把握できます。

また,4点セットで弁護士が受任者となれば,それこそ依頼者が死亡した後まで関与し続けることになります。こうした長期間の関与を前提として一種のオーダーメイドの顧問契約(ホームロイヤー契約)があります。

 

 

料金は,お客様の資産の多寡,出張の有無,及び相談の頻度等により,1か月5500円から55000円を目安に,協議して決めます。

一般的な内容であれば,月額5500円から1万6500円の間に収まるでしょうか。

 

 

2 財産管理契約

今までの日本社会では,多くの場合高齢者の子どもが介護の一環として親の財産を管理することが多かったといえます。

親族が管理する利点は,報酬がかかりませんし,身内ならではの気安さがあります。

しかしながら,身内だからこそ言えないことがありますし,最近では「自分は義理の父母の介護で大変苦労したので,子どもに苦労をかけたくない。」という声も多く聞かれるようになりました。

 

身体的介護は介護サービスを利用するように,財産管理の場面でも専門家のサービスを利用してみては?という観点からのご提案が財産管理契約です。

 

契約ですので,どの範囲の財産を(全部か,一部か)どのように管理してほしいのか契約者の意思を反映させるための融通がききます。

他方,契約ですので判断力が低下してからでは使えませんし,公的制度でないため受任者の地位が不安定で,いざというときに必要な法的手段をとることができないリスクがあります。

このようなリスクを回避するため,他に任意後見契約や成年後見と組み合わせ,適宜これらに移行していく必要があります。

 

費用は,財産の多寡及び予想される業務量その他の事情により月額1万6500円から11万円を目処に,協議により決めます。

一般的に言えば、賃貸不動産の管理など手間のかかる業務があれば高くなることがおおいです。

 

 

3 成年後見制度(保佐,補助)

すでに判断能力が低下してしまった場合には,家庭裁判所に対し,成年後見人の選任を申し立てることになります。個々人の判断能力の低下には程度に差がありますので,低下の程度により,保佐や補助といった制度になります。

成年後見人は,裁判所が選任した上,その監督までするため,成年後見人の法的立場が安定し,業務遂行に対する監督が行き届きやすいという利点があります。また,すでに判断能力が低下してしまった場合には,成年後見をはじめとする法定後見制度を使うほかありません。

しかしながら,実態はというと、裁判所という公的機関が業務遂行を監督する以上,後見人には財産を管理するにあたり裁量の余地があまりなく,必要最低限の収入と支出の管理(例えば,年金を受領して病院への支払いをするなど。)のみを行い,元本割れするリスクのある運用などができません。相続税対策も難しいでしょう。

被後見人が望む支出であっても,後見人と裁判所が協議した結果,支出が認められないことも多々あります。ご家族が「(被後見人が)元気な時はこうしてくれといっていたので,お金を出してほしい。」というご要望を出されることもよくありますが,成年後見人と裁判所の判断でご要望にお応えできず,険悪な雰囲気になることもしばしばです。

 

4 任意後見契約

そこで、任意後見契約をお勧め、ということになります。

まず、公証人役場で公正証書を作成することで任意後見人を選任します。本人の判断力が低下した段階で,申立により裁判所が任意後見監督人を選任し,任意後見が開始されます。任意後見人は,任意後見監督人の監督の下で,後見事務を遂行します。

公正証書を作成する必要がある点で財産管理契約よりも煩雑ですが,専門家である公証人が作成するので不合理な契約の内容にはなりませんし,任意後見監督人の監督があるため不正が行われにくくなっています。

なにより,公正証書を作成する段階で決めておけば,任意後見人の業務遂行にあたってかなり自由にご本人の意思を実現させることができます。

財産管理契約と成年後見契約の良いところ取りをしたような制度ですので,もっと活用を図るべきでしょう。

 

任意後見契約は,判断力が低下してから発動する制度ですので,判断能力が十分なうちから財産管理を委ねたいという場合には,財産管理契約と併用する必要があります。また,契約である以上,すでに判断力が低下してしまった場合には任意後見契約をすることができません。

 

 

5 遺言

死後に財産を誰にどのように残すかは,重大な関心事でしょう。遺言がないまま相続が発生すれば,原則として法定相続分に従った機械的な分割がなされますので,現実にそぐわない不公平な結果を招くことがあります。残された遺族が年々もかけて争うため,「争続」などといわれることもあります。弁護士から見ると,「遺言があればここまで揉めなかったのに。」という事案は多くあります。

実際に遺言をされる場合には,専門家の意見を求めてからにすることを強くおすすめします。

 

6 死後事務委任契約

任意後見人及び成年後見人(保佐人・補助人を含む。)の職務は,本人(委任者)の死亡により終了します。あとは,管理する財産を相続人に引き継ぐ業務が残るだけです。

例えば,死亡時に入院していた病院や施設の支払などは,厳密に言えば成年後見人が支払うことはできないはずです。死亡と同時に相続人に金銭債務が分割して相続され,相続人が相続分に従って支払うのが法の建前です。それでは病院や施設に迷惑をかけてしまうので,成年後見人が各相続人の意思に反しない範囲で成年後見業務に付随する業務として支払うことはありますが,法の建前からすれば危ない橋を渡っていました(*)。相続人が激しく争っている場合には,病院や施設の支払が宙に浮いたままいたずらに時間だけが過ぎる場合もありえます。病院や施設側とすれば,いつ支払われるか分からない人を危なくて入所を躊躇せざるをえない場合もあるかもしれません。

*この点、従来は委任契約の余後効などとして議論されてきましたが、民法873条の2で最低限のことだけできるという立法的な手当がなされました。最低限のことしか規定されていませんので、保存行為を超える行為はできません。

 

他方,相続人にどのように財産を引き継ぐかは,遺言によって決めておくことができます。ただし,遺言によって法的効果を有する事項は,法律によって定められています(法定遺言事項)。これは,自分で作成した遺言(自筆証書遺言)であろうと,公証人が作成した遺言(公正証書遺言)であろうと変わりません。もちろん,遺言には付言という形で法定遺言事項以外のことも記載できますが,法的な効力は持ちませんので単なる故人の願望にすぎず,それが実行されるかどうかは残された人々次第です。

 

そこで,任意後見及び成年後見と遺言の間隙を埋めるものとして,死後事務委任契約が必要になります。

このように,①財産管理契約,②任意後見契約,③遺言,④死後事務委任契約を合わせてまとめておくことより,元気なうちから死亡後まで隙間なく自己の意思を実現していくことができるようになります。

この4つのものを併せて同時に公正証書を作成することが望ましいでしょう。

 

 

 

 

とはいえ、まずは、ご家族で終活に向けた話し合いをスタートすることが何より大事になってきます。

相続について、ご家族で話し合う。

これは、なかなか難しいことですが、保険の見直し等をきっかけに、家族以外の第三者を踏まえて話し合うことをスタートさせるのも一つの手段です。

 

当事務所でも、その話し合いの場を、ご提供させていただいています。

一度、お問い合わせをいただけると幸いです。