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片山法律事務所

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もしも親が認知症になったら? 成年後見(1)~申立て~

終活

1 成年後見制度の必要性 

 法律上,人は成人することによって一人前と扱われます。成人年齢は,令和4年4月1日から18歳に引き下げられました。

 近代市民社会では,人間は一人一人が合理的思考をもち,自分のことは自分で決めることが最も自分の利益に適う(ひいては,それが社会全体の利益につながる。)という建前があります。

 

一人前と扱われるということは,何らかの法律行為を行うことは自己の合理的な判断の結果とみなされるので、その法律行為から生じる効果をすべて引き受けなければなりません。いわゆる「自己責任」という話です。

 

 とはいえ,全ての人が合理的な判断をできるというものではありません。

 法は,未だ判断能力が発展段階にある未成年者に一定の保護を与えています。

 これに対して高齢者は,年を取ることにより判断力が低下することは避けられないのですが、高齢者であることのみをもって一定の年齢で一律の保護を与えるという制度にはなっていません。

 高齢者と一口に言っても若い人よりもずっと元気な方もいらっしゃいますので、当然と言えば当然です。

 そこで法は,高齢者の中から判断能力が低下した方だけを選別して一定の保護を与えるという制度になっています。

 

2 成年後見の申立て
 すでに判断能力が低下してしまった場合には、本人が契約をすることができないので、任意後見制度や財産管理制度はもはや使えません。

 そこで、家庭裁判所に対し、成年後見人の選任を申し立てることになります。

 個々人の判断能力の低下には程度に差がありますので、低下の程度により、保佐や補助といった制度になります。

 

 成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(民法7条)についてなされます。
 保佐は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(民法11条)についてなされます。
 補助は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(民法15条)についてなされます。

 

 いずれも、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人・後見監督人等の請求により、家庭裁判所が審判をすることによって開始されます。

 以下では、便宜上、成年後見、保佐、補助をまとめて成年後見として説明します。

 身寄りのない高齢者など、親族がいない場合などには、市町村長が申立てを行うことができます(老人福祉法など)。全ての高齢者について市町村が申立てをすべきという政策論もありうるところですが、税金を使用するものですので、あくまで親族が行うことができない場合に、補充的に市町村長が申立てを行います。実務的に高齢者問題に関与していると、市町村の担当者によっては、なかなか市長申立てをすすめてくれず、非常に苦労することもあります。

 

 さて、事理弁識能力がどれほど残っているかは、最終的には家庭裁判所が判断しますが、その前提となるのは医師の診断書です。成年後見を申し立てようとする場合には、自己の財産の管理ができるかどうか、主治医の判断を聞くことがスタートとなります。主治医が「もう財産の管理は難しい。」と言われるのであれば、診断書を作成してもらいましょう。
 なお、家庭裁判所に対し、成年後見(保佐・補助を含む。)の申立てをする際には、所定の診断書の書式があります。高齢者の住所地の家庭裁判所(管轄裁判所)に問い合わせをされるとよいでしょう。ネット上の裁判所のサイトにも書式があります。