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片山法律事務所

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単身者から入所したいと申込があった場合,介護施設側は拒むしかない?

終活

高齢者が介護施設に入所しようとする場合,もちろん,認知症が相当進んでいれば自身で諸手続をすることはできないので,誰かが代わりに手続をすることになります。

他方,高齢者がたとえ元気であっても,身元保証人を求められます。

通常は高齢者と親しい配偶者や子ども,後を託された兄弟姉妹,甥姪,いとこなどが身元保証人になります。

では,配偶者に先立たれ,子どもはなく天涯孤独であったり,兄弟姉妹とも絶縁状態で,誰も身元保証人になってくれる人がいない場合,どうしたらいいのでしょうか。

ご本人が一人暮らしを続けることができない場合,どうにかして施設入所につなげなければなりません。

施設側としても,本人の年金収入がしっかりしていて施設使用料を十分に払い続けられる場合,財産が潤沢で枯渇するおそれがない場合であれば,施設料金の滞納といった心配はないので,優良顧客として喜んで入居してもらいたいと思うはずです。

ところが,いくら本人にお金があっても,身元保証人がないと入所するのが困難なのが実情です。

施設側の懸念点としては,万が一,本人が死亡した場合にご遺体の引き取りはどうするのか,ご葬儀は施設側がしなければならないのか,施設に残置された家財道具や身の回りの動産類は勝手に捨てていいのか,絶縁状態とはいえ一定の身分関係があれば法定相続人になりますから,相続人間の紛争に巻き込まれるのではないか,といったところでしょうか。本人が死亡しなくても,医療同意をどうするか,病院に長期入院になった場合には,通常はいったん退所手続をして部屋を明け渡してもらうことになりますが,その手続をしてくれるのは誰か,本人から預かって預貯金通帳からお金を引き出す手続をしていいのか,といった問題もあります。

これらの諸問題を解決する一つの方法は,成年後見制度の利用です。

ご本人に判断能力が十分であれば,任意後見制度や家族信託といった手段をとることもできますが,一人暮らしが難しいレベルになった場合には,これらの制度を使うことは難しいでしょう。

 

成年後見制度を利用すれば,家庭裁判所に選任された成年後見人が施設との契約を代理で行い,本人死亡後も一定範囲のことができます。

一定範囲というのは,法律上できることと実務上成年後見人がなし崩し的に関与していることの間に齟齬があるため,このようなもってまわった言い方になります。

たとえば,死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為は,法律上成年後見人が行うことができます(民法873条の2)。

「保存に必要な行為」が具体的に何を指すかは難しいところですが,後見人業務を多数行っている弁護士としては,事案に応じてかなり柔軟に対応しているつもりです。

ですので,ひとまず施設側が懸念する点は,成年後見人が選任されれば,クリアされるでしょう。

 

ただ,残る大きな問題は,誰が成年後見人の選任を求めて家庭裁判所に申立を行うのかという難問があります。この点は,別の機会に記事に書くかもしれません。

 

当事務所では,成年後見人の選任申立を積極的に行っています。ご相談があれば,施設まで出張してご相談をお受けすることもできますので,お気軽にご相談ください。

(ただし,ご自宅への出張相談はお受けしていません。)