読み込み中

片山法律事務所

お知らせNews

男性が離婚調停を有利に進めるための戦略

離婚

 たとえば、野球でもサッカーでもいいので地域のあまり強くないチームの監督にあなたが任命された時、

あなただったらどのようにチームを再建しますか?

 

野球で言えば、攻めは3割打てれば上出来と言われますが、でも、守りは10割を期待されます。

サッカーで言えば、1-0でも勝ちですし、0-0で守り切ればPK戦で勝つという可能性もでてきます。

 

どんなに「つまらない試合」と批判されても、まずは守りを固めるのがどんな勝負でも真っ先に取り組むべきことです。 

「攻撃は最大の防御」とばかりに攻撃に注力してチームが崩壊した例が頭に浮かびませんか?

まずは守りを固めて相手に得点を与えないことが肝要です。

チームを立て直すには、【守りの戦略】が第1の選択肢になります。

 

男性側の離婚も同じ。

 

あなたがどんなに「自分に非がない」と思っていたとしても、離婚調停や裁判は男性にとっては、必ずしも満足いく結果にはつながらないのが現実です。

(ただし、「自分に非がない」のは、客観的にそのとおりである場合と、客観的には非があるのに本人が気づいていないだけの場合もありますので注意が必要です。)

 

たとえば、子どもの親権ひとつをとっても、ある統計によれば、8割以上が母親が親権者になっているようです。

従前よりは「母性優先の原則」が必ずしも重視されなくなってきたとは言われてきていますが、実態が変化したようには感じられません。

 

では、男性側は、今後の調停や審判、裁判に向けてどのような戦略を立てていけばいいのでしょうか?

 

今回は、男性にとっての【守りの戦略】をお伝えしていければ、と思います。

 

調停・審判で必要なのは【証拠(事実の積み重ね)】

 

離婚は、離婚協議⇒離婚調停⇒離婚訴訟と進んでいきますが、

いずれの段階でも重要になってくるのは証拠です。

 

調停であろうと、裁判であろうと、あなたがた夫婦にとって第三者である調停委員や裁判官が関与することになります。

調停員も裁判官も第三者ですから、夫婦間で何があったかを正確に知ることは不可能です。

そのため、何があったかを知るためには当事者から事情を聴取しますが、もう破綻してしまった夫婦の言い分ですから、双方の言い分が食い違う場合もしばしばです。

そうなると、言い分だけではなく、客観的な証拠に基づき判断することになります。

 

そのため、調停・訴訟を自分に有利に進めるためには、いかに意味のある証拠(事実の積み重ね)を収集・提示し、調停委員や裁判官に真相を知ってもらうかが重要です。

 

ではまずどのような事実に関しての証拠(事実の積み重ね)が必要でしょうか?

 

例:子どもの親権の場合

 

たとえば、先ほどの子どもの親権でいうと、一般論でいうとどちらが親権者となることが「子の利益」(民法820条)になるかという簡単な回答になりますが、具体的に何が子の利益になるかと考えると、大変な難問です。誰もが自分が親権者になることが子の利益になると主張して譲りません。

そうなると、事実の積み重ねを調査し、いくつもの要素を総合的に考慮することになります。

いくつかの要素を挙げてみます(もちろんこれだけではありません。)

 

1 養育の事実(継続性)

まず、今現在の生活において、子どもの面倒を見ているのは誰か?という要素があげられます。食事・身の回りの世話、幼稚園への送迎、勉強を教える、寝かしつけ、歯磨き・・・

子どもは環境が変わることが大きなストレス要因となるため、できる限り現在の環境を大きく変えない方が良い、という考慮が働きます。

 

 

2 精神的・肉体的・経済的に健全であること

子どもを養育していくために精神的・肉体的・経済的に健全である事実も証明していく必要があります。

あくまでも、親権は権利ですが、子どもを育てていく義務でもあるので、その義務を全うするにふさわしい精神的、肉体的、経済的な状況にある事実が必要になってきます。

これらが不足する場合でも、祖父母、行政(福祉)など第三者の援助により補うことも可能です。

もっとも、一時的にはもちろんやむをえないと思われますが、将来までずっと自立せずに祖父母の援助を当然の前提とするような計画を立てる場合には、それが子どもの利益になるかは疑問符がつけられるかもしれません。

 

 

3 暴力をふるっていないこと

子どもに暴力をふるうなど虐待がある場合は論外です。

子どものしつけだといって暴力を正当化する主張もみかけますが、この令和のご時世ではその主張はとおらないでしょう。

暴力に至らない暴言、ネグレクトなども虐待にあたりますが、これらの行為をした側はそれを虐待とは思っていないケースがあります。

特に、暴言による虐待は、言った方は全く気にしていないことも多いですね。離婚の話が持ち上がってから急に突きつけられて「そんなつもりはなかった」と言っても後の祭りです。

 

4 その他、子どもの幸せがどちらにあるか

学校生活や友人関係の変化が子どもにとってどのような影響を与えるかも考えなければなりません。

離婚により、学校を転向したり生活拠点を変えたりしなくてはならない場合には、子どもにとっては世界が一変する大変な事態です。大人が引っ越すのとは訳が違います。

 

これまでの経験から言えば、親権を取得したいと主張する父親は、父親・母親、どちらに子どもがついていったほうが、子どもにとって幸福かという立論をしがちです。

そのため、いかに自分が母よりも親権者として相応しいかを延々と主張しがちです。

しかし、それでうまくいった試しがありません。

私の過去の案件で父親が親権を取得したケースは、①母親が親権をいらないと主張したケース、②母親による虐待があり子どもが児童相談所に保護されたケースの2件だけです。

つまり、母親に親権者となることを諦めてもらうか、児童相談所が介入するレベルまで母親の監護状況が破綻しているケースでなければ父親が親権者となることは難しいといのが肌感覚です。

 

 

5 離婚の要因は関係ない

離婚の原因がどちらにあったのかは、子どもの親権には直接関係ありません。

仮に不貞行為により婚姻が破綻したとしても、異性にだらしなくても子どもには優しいということもありうるからです。

もちろん、家庭内暴力(DV)の場合などは母親に対するDVが子どもの面前で行われた場合には子どもの虐待にもなりうるため例外です。

 

6 その他にも、離婚成立後の財産分与、慰謝料、養育費にまつわる事実として双方の所有財産に関しての証拠を収集していく必要があります。

  ほかにも親権を諦めて面会交流を求める場合には、その環境調整も必要になります。

 

 

【離婚成立にかかるコスト】では、この事実をどう証明していくのか?どんな証拠が必要?

 

問題は、この事実をどのような証拠でどのように証明していけばいいのでしょうか?

ここが問題なのです。

 

「一刻も早く別れたい」「なんで自分は悪くないのに、お金を払わないといけないんだ」。

このように思われる方も多いのですが、調停・裁判となると、その多くは①手続的・時間的なコストや②精神的コストが、重くのしかかってきます。

 

たとえば、財産分与の額を算定するだけでも、源泉徴収票、預貯金通帳、生命保険証券、退職金証明書、不動産査定書、車の査定書、・・・・・。

これらの書類を集めるために、市役所、年金事務所、銀行、不動産業者、保険会社・・・

多くのところを回る必要が出てきます。

裁判所に提出するために、すべてコピーして通しページをふり、甲○号証として号証をふり、証拠説明書を作成し、A4用紙にコピーして、場合によっては副本を用意して・・・とこれだけでも大変な事務量になります。

 

そのうえ、いろいろな事実を要領よく調停委員や裁判官に理解してもらうために、主張書面、準備書面、陳述書を作成しなければなりません。

ときおり、手書きの書面で何十枚も書面を提出する方もいますが、それでは言いたいことが伝わりません。

 

すでにこれらを集めて裁判所に提出するだけでも、①手続き的・時間的には相当なコストです。

 

また、調停や裁判はすぐには終わりません。

離婚調停はどんなに短くても半年、長い場合には2年以上かかることも少なくありません。

 

そのため、②精神的な負担も相当なものです。

離婚調停は当事者が出席しないといけないので、期日ごとにお休みをとって裁判所に出頭しなければいけません。イライラやモヤモヤがつのってきます。

 

一方、離婚が成立しない限りは、基本的には収入が多いほうが他方に対して婚姻費用を支払う義務があるので、通常、男性側は、女性側・妻側に婚姻費用を支払い続ける義務があるのです。

つまり、男性側には③金銭的コストも、重くのしかかってきます。

 

これらのコストをかけても、男性側は(女性側ももちろん)証拠を集めていかなくてはならないのです。

 

【守りの戦略】そうなると、男性側の離婚戦略としては?

 

このように考えたとき、証拠収集は必須なので、いかにそれらの証拠・事実を効率よく、短期間で集め、書類を作成するかが問題になってきます。

また、証拠を集めたとしても、事案によっては相手方の要求を丸呑みしてでも調停をいち早く成立させたり、打ち切ることが結局はトータルでのコストを削減させることもあります。そのためには相手方や相手方弁護士と話し合って落としどころを見つけ出すことも必要となってきます。実際問題、調停のほうが当事者間の話し合いで柔軟な解決もできます。

私も弁護士経験が少ないときは、「調停はまだるっこしいことをやっていて、時間の無駄ではないか?」と思っていた時期もありましたが、それなりに経験をしてくると、「調停こそが、こちらの要望を最も柔軟に実現しつつ、かと言って裁判所の基準からもそれほど離れず、最も良い具合に話が落ち着くため、離婚の主戦場である。」という考えに至りました。

 

これらの訴訟戦略・柔軟な軌道修正ができるのが、代理人である弁護士ということになります。

もっとも、特に家事事件においては、弁護士は代理人とは言っても、当事者は夫婦であり、夫婦が自分たちの問題をどう解決するかが最も重要です。弁護士は伴走者であり、助言者(参謀)でしかありません。

 

とはいえ、助言者が存在せず、当事者の感情にまかせて進行すれば、単に離婚成立まで無駄に時間がかかってしましい、①②③のコストがかかるだけ、あるいは、言いたいことも言えずに終わり、不満だけが残るということにもなりかねません。

 

ここからすると、男性側の離婚戦略としては、いかに①②③のコストを低減させるか、いかに短い期間で証拠を集めて離婚の成立に持っていくかがいかに大事かを、おわかりいただけたでしょう。

また、調停が無駄に長引きそうなときには、そこに見切りをつけて調停を打ち切るという調停戦略を持ち合わせることも必要になってきます。相手方に明確な離婚原因があって、離婚訴訟になった場合に証拠上必ず離婚できる見込みがある場合です。訴訟において裁判所主導で和解協議するという方法もあります。

 

このあたりの調停・訴訟戦略をいかに持ち合わせるか。

これが、男性側にとって【守りの離婚戦略】と言えるのではないでしょうか?

 

その伴走者として、弁護士の選任をお勧めします。

 

弁護士の選任にはもちろんコストもかかってきます。

ですが、ここにはコストをかけてでも、離婚に絡む①②③の上記コストや、これからの生活・仕事への影響を踏まえて、トータルとしてのコストを減らしていくことが賢明だと考えます。

ある意味、損切りに踏ん切るため、背中を押してあげる存在と言ってもいいかもしれません。

 

まずはご相談へ

 

当事務所では、【男性側に立った離婚戦略】をご案内しています。

数多くの離婚に関する話し合い、調停、裁判にかかわってきた経験をもとに、離婚戦略を一緒に考えましょう。

 

まずは、当事務所にご連絡いただければと思います。