【会社をたたむ時】従業員を守りたい経営者へ
インバウンドの好影響が・・・と、新聞記事にはありますが、
実際の地元経済はというと、物価高や資材高騰のこともあって、
閉店が目に付くところです。ここ下関でも、街中でも、ショッピングモールでも、閉店した店舗をみかけることが多くなりました。
経営者はもちろんですが、従業員のことを思うと、心が痛みますよね。
従業員側からすると、
「これまでの給料はどうなるのか」
「これからの仕事は?うちの家族はどうなるんだ?」
様々な不安や恐怖、怒り等が一気に押し寄せてくるものです。
破産・廃業をすると従業員は、「守れない」のが原則
破産や廃業すれば、基本的に、全従業員は解雇されます。
経営者はその時点での未払いの賃金や、解雇予告手当として1ヶ月分の給与相当額を用意しなければなりません。
とはいえ、会社の資産には金融機関が担保を設定しているものが多いです。そんな場合は、金融機関の債権が最優先で回収され、「残った」資産から従業員の賃金や退職金が捻出されます。
破産のタイミングを誤ってしまうと、会社の預貯金が残っていたとしても銀行が貸付債権と相殺してしまうことがあり、未払賃金を払うキャッシュが残らないことも少なからずあります。
そのような場合に,未払賃金の一部を企業に代わって支払うのが,未払賃金立替制度などです。労災保険を払っている企業であれば、賃金の最大8割の立替払いを受けることも可能です(上限あり)。
それでも、「これからの仕事は?うちの家族はどうなるんだ?」という不安はぬぐえるものではありません。
人手不足のこの時代=事業自体を「売れる」時代
しかし、です。
今のこの人出不足のご時世。
労働力は、それ自体として大変価値があるものです。
従業員の持つ技術力、チームワーク、営業力、そしてそれらにかける教育コストを見たときに、そこに価値を見出す企業(買い手企業)にとっては、大変価値があるものです。
たしかに倒産・廃業時には、従業員のことを考える余裕もなくなることでしょう。
しかし、従業員の将来を考えると、事業自体を「売って」、従業員をその不安から守ることを考えてみませんか?
「守る」方法は、さまざま
事業の売り方は様々です。
合併や、株式譲渡。
その他にも、会社分割により黒字部門を切り出しての第二会社を作り、第一会社を破産・特別清算させる方法(第二会社方式)等。
個々の従業員に転職先を探し出す余裕がなくても、これらの場合は、チームとして従業員を守っていくことができるかもしれません。
そのうえ、売却したキャッシュで債務の返済に充てることもでき、経営者であるあなた自身やあなたのご家族を守ることにもつながります。
ただし、売る前提として、会社の「整理」+銀行交渉を。
ただし、会社・事業を売るには、その前提として経営改善に向けて会社を整理していく必要があります。
たとえば、3年後をめどに、分割する場合はその分割した部門だけでもいいので、単年度黒字化を目指す経営改善計画を作成して、銀行と交渉(リスケ、つなぎ融資、債権放棄の交渉)をしていったりします。
その他、黒字化を目指して、従業員の給料や役員報酬等を減額したりもしていきます。
また、銀行とも交渉をしていく必要があります。
これをしなければ、その「売る」という行為自体が将来的に認められなくなることもあります(債権者取消権、否認、譲渡禁止の仮処分等)。
これらを多面的に目配りしながら、なおかつ現に動いている会社の経営を続けるというのは、経営者だけで行うのは至難の業です。
中小企業活性化支援協議会といった事業再生のための制度を利用するのもよいでしょう。
ただ、そうした制度を利用するとしても、なおやることはたくさんあります。
経営者であるあなたの伴走者が必要でしょう。
税理士を通じて銀行とリスケ交渉・借換交渉という経験をもつ経営者は少なくないかもしれません。
ただ、将来的に法的整理の可能性があるのであれば、弁護士にも必ずご相談ください。
弁護士は会社の法的処理の専門家です。
とはいえ、弁護士の中にも会社・個人事業主の法的整理について造詣が深い人とそうでない人もいます。
よく選ばないと、弁護士に相談することでかえって問題を複雑化させてしまうこともありえます。
お早目のご相談を
従業員をまもるためにも、まずは、手元に、選択肢と時間の余裕がある必要があります。
どうしようもなくなってご相談にいらっしゃっても、打つ手がなくなることもあります。
いち早く、ご相談に来ていただければ、ご一緒に打つ手を探っていくことができます。
ぜひ、お早目にご相談していただければと思います。