廃業、破産のタイムリミット
最終的に破産の手続を選択する場合でも、最初に法律相談を受けるときには「廃業したい。」という要望からスタートすることもあります。
今日は、その廃業について、考えていきたいと思います。
廃業って、一見、経営者の自己判断でできそうです。
自分で立ち上げた事業を、閉じるわけですから。自分で始められた以上、自分でやめられそうだと感じるのは普通の感覚かもしれません。
ただ、実際には、その事業には定年間際の従業員や、取引先、長年の顧客、融資先の金融機関、その家族と、いろいろな人の人生や想いといったしがらみ、お金の問題、さらには法的問題が絡んできます。
これらをすべて清算しなければならず、実は簡単には事業を閉じることができないのです。
「定年までもうあと3年。なんとか、事業を続けてくれないでしょうか?」
「御社との取引がなくなったら、ウチはもうやっていけなくなってしまう…」
そんな利害関係者の想いもわかるので、経営者はなかなか廃業を決断できないものです。
そうして、ズルズルと決断を先送り。
その他にも、オーナーさんの将来への漠然とした不安や
逆に、
「この大型取引が決まれば・・・」「この新入社員が育ってくれれば・・・」といった淡い?期待から、廃業の決断を先延ばしにすることもあるようです。
もちろん利益が出る体質であればM&Aで第三者に会社を売却するという選択肢もあります。
しかし、昨今の経済環境の悪化、とりわけ下関のような地方では極めて厳しい経済環境です。
そして、今は何より銀行融資が厳しくなってきていますよね。
日銀がまとめた2023年7月の主要銀行貸出動向アンケート調査では、
銀行の融資態度を示す指数がリーマンショック以来の14年ぶりの低水準となったということです。
昨年まではコロナ融資でつなぎ資金の融資が得られましたが、いわゆるゼロゼロ融資もなくなり、続々と返済が始まっています。
そうなると、いよいよ資金繰りが厳しくなってくる企業さんも多いのではないでしょうか。
となると、
事業の廃業もその選択肢の1つになってくるところもあるはずです。
ただ、そのタイミングが難しいんですよね。
どうしてもズルズルと先延ばしにしてしまい、破産さえできなくなってしまうこともあるくらいです。
だから、廃業・破産のタイムリミットを、
強制的に決めておくということが大事だということです。
弁護士からみた廃業・破産のタイムリミット
まず、いつが、廃業のタイムリミットなのか。
これは、定量的に事前にご自身で決めておくことが大事かと思います。
・資産-負債で、負債が上回るようになったら廃業
・単年度赤字が3年連続続いたら廃業
・自分の一代で75歳になったら廃業
このように決めておかないと、上記のように
なかなか廃業を決断できないのが現実です。
実際には決めておいたとしても、廃業の決断は、相当難しいものです。
相談相手を見つけておくことがいかに大事か、ですよね。
ただ反対に、すでに、税理士さんにも相談して、
会社財産のうち換価価値のあるものを売却してお金にかえたとしても、税金(公租公課)、金融機関からの借入金、取引先への買掛金といった債務を全部払えない場合。
実は、その段階は「廃業」は赤信号です。
もうそれは破産・再生を考えるタイミングだということになります。
このタイミングを逃してしまうと、今度は破産・再生といった法的手続すらとることができなくなるリスクを負うことになってしまいます。
破産が出来ないとはどういうことか。
それは、最後は、すべてを放り出して従業員、債権者、取引先その他に大迷惑をかけて開き直るか、夜逃げをすることになりかねません。
何度も申し上げていますように、
事業規模にもよりますが、
現預金残高が200万円を切ってくると、破産もできなくなる可能性が出てきます。
この辺りの実務上の数値をご存じの税理士さんであれば、破産の提案もあるでしょうが、
実際にはご存じの税理士さん・担当者さんも多くなく、
また顧客を失うことになるのですから、なかなか自社のクライアントさんに破産を進める税理士さんもいないかもしれません。
改めて言いますが、
その廃業が、破産を意味する場合、
弁護士から見たタイムリミットとしては、200万円が1つの基準ということになります。
ちなみに、法人で再生を希望される場合は、さらに裁判所に納めるお金が増額されます。
破産の場合とは違って、再生の場合は、再生委員による数年間の継続的なモニタリングが必要になるので、その報酬額分ほど、高くなるわけです。
廃業の相談相手
とは言え、廃業・破産について。
それは、経営者が相談できる相手がいないのが実情ではないでしょうか。
社内に相談できる相手もいない。
顧問の税理士さんも進言をしてくることは期待できないかもしれません。
家族に対しても、将来への不安をあおるような相談をできにくいのもわかります。
そんなときこそ、弁護士に相談をされてみてください。
当事務所でも、廃業相談を受けたものの、そこから相談者の状況を分析し、破産・再生をおすすめすることも少なくありません。
廃業できるのかどうか、再生できるのかどうか、事業の再起を図るのであれば、いち早い段階でのご相談をいただけたら、
次の一手をご提案することができます。
もちろん廃業ではなく、破産を提案することもあります。
ただ、破産ができるということは、次のステップに向けて
法的に再スタートが切れるということ。
夜逃げをせざるを得ないようなそんな状態では、次のステップを踏み出すことは出来ません。
あなたの家族や従業員、取引先を守るためにも。
だからこそ、早い段階でのご相談をお待ちしております。