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片山法律事務所

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破産の現場からー 事業の再建に向けた2つのチェックポイント

破産・廃業・借金

1 はじめに

弁護士事務所に破産のご相談にいらっしゃる経営者・個人事業主の皆さま。

一説によると、黒字倒産が実はその4割を占めるというデータもあるとのことです。

幸か不幸か当事務所において黒字倒産事案はまだみたことがありません。

当事務所にいらっしゃる経営者でよく見かけるのが、担当者に任せきりにして税金・保険料の支払いのタイミングを把握されていない経営者、会社に現預金がどのくらいあるのかを把握されていないどんぶり経営の経営者といったタイプです。

 

今日は、こんな破産の相談現場から見た、弁護士からの経営者への一言、というテーマでお話をしてみたいと思います。

 

*****

 

2 税金・保険料の年間スケジュール作成を

 

 

まず、先ほど述べたように、破産の相談にいらっしゃる企業・事業の経営者の多くが、税金や保険料(公租公課)を滞納されてから相談に来ることが少なくありません。

 

公租公課の滞納があると、事業を再生していくうえでは黄色信号。

税金はすぐに差押をしてきます。

 

差押がなされると事業の再生はほぼ赤信号です。

差押は銀行取引停止事由にもなります。

銀行取引約定書という分厚い契約書を取り交わしているはずで、小さい字でいろいろ書いてありますが、読んだことはありますか?

隅から隅まで読む人はまずいませんよね。かく言う私も読まずに印鑑を押しました。

 

銀行取引約定書には、差押が期限の利益喪失事由として記載されているはずです。

ということは、差押があると銀行からの追加融資が受けられないのはもちろん、遠からず期限の利益が喪失され残債務の一括請求まで来かねないということです。

 

通常の債務であれば、裁判で争った上で、判決が確定してから差押がきますが、税金関係はいきなり差押ができることが恐ろしいところです。

 

 

ところが、多くの経営者は、現状がどんな状況にあるかを客観的にわかっていらっしゃらないのです。

「まだ再生できる!」「来月の大きな取引が決まれば、まだ何とかなる」といったことをおっしゃる経営者の方も少なくありません。

 

 

取引相手・金融機関相手だと、まだリスケや支払期限を先延ばしにしていただけることもあるのですが、税金関係はそれを許しません。

せいぜい、分割払いの交渉をするだけです。分割払いするといっても、以後発生する公租公課は予定どおり支払うことに加えて分割金が上乗せされるのですから、支払は簡単ではありません。

 

ですから、公租公課の滞納があると民事再生も覚束なくなるのです。

 

そうならないために試算表を作成することが望ましいですが、そこまで至らなくても、公租公課及び主立った固定経費の支払に関して年間スケジュールを立てて、いついくらの資金が必要になるのか、把握する必要があります。

少なくとも、過去当事務所で破産に関係した経営者の方々は、このあたりが非常に疎いといわざるをえません。

 

年間スケジュールというと、どうしても、自社の事業計画・営業計画ベースに立ててしまいがちですが、どんなに本業が黒字でも、資金繰り次第で会社は倒産することあります。

 

だからこそ、主な支払について、年間スケジュールを立てて、いついくらの支払いが必要になるのかを明確にしておいてほしいというのが、破産の現場から強く訴えたいポイントの1つ目ということです。

 

 

3 現預金残高のチェックを

 

次に、破産の現場から経営者の方にお伝えしたいのが、損益計算書(PL)の税引き後の利益ばかりでなく、現預金残高もチェックしてほしい、ということです。

 

利益が出ていても現金・預金がなくなれば経営は続けられません。逆に、赤字でも現金・預金があれば経営は続けられます。

 

 コロナ禍において緊急事態宣言下で経済活動がとまり、強制的に赤字化させられたのに多くの会社・店舗が破産しないで済んだのは、コロナ融資や補助金などで現金が支給されたためです。

 

他方で、特に中小企業の場合、BSに資産はあるけれども、実際はそのまま現金化できない資産が多いこともあります。

 銀行に決算書類を見せるに際して、見かけ上黒字決算にして運転資金を借りられるようにするため、決算書類に細工することがままみられます。

いわゆる粉飾決算です。

 

よくあるのが在庫商品のかさ上げです。

 

たとえば、数年前の商品の在庫が計上されていませんか?

数年間売れないということは、もう売れない=経済的には0円なのに、仕入時の価格で計上されていることがよくあります。

破産管財人として現場を見に行くと、BS上は何百万円もの価値があるのに、実際には二束三文でしか売れず、かえって廃棄するためにお金がかかるという事態は珍しくありません。

 

 

未収金については、回収見込みがありますか?

たとえ法律上は権利が認められても、現実的に回収できなければ経済的価値はゼロです。

売掛先が破産はしていないけれども事実上廃業状態にあるような場合です。

 

あくまでも、現預金こそが経営を支えるものと思ってください。

別の記事でも何度か書きましたが、現預金が尽きてしまえば破産もできなくなりかねません。

赤字・黒字だと利益ベースで考えるのではなく、現預金のチェックを忘れずに。これが破産の現場から、弁護士としてお伝えしたい2つ目のポイントです。

 

4 最後に

これまでに、何度も破産の現場で、後悔をされる経営者を見てきました。

 

そうならないためにも、せめて、この2つはチェックをされてほしいものです。

 

そして、もしも一手でも早めの策を打てていたら、再生の道が開かれることもあります。

 

事業が成り立たなくなってきたという経営者の方。

チェックは、第三者であるほうが、より客観的にできるものです。

 

当事務所にご相談に来ていただけたらと思います。