【100万円】お知り合いの経営者に破産という選択肢を示すことができるのはあなた
【100万円】お知り合いの経営者に破産という選択肢を示すことができるのはあなた
「あともう少し!」、と学生時代は勉強や部活・スポーツに励んだ経営者の方も多いと思います。
ただ、これが経営危機に陥っているときにも、同じく「あともう少し!」でいいかと言うと、そうではありません。
でも、経営者本人は「あともう少し!」と耐えてしまうものです。
そこで、今回の記事は、そんな頑張り屋の経営者を救えるのは、その周囲にいるあなたですよ、と言うお話です。
自営業者・零細企業の経営がピンチ
コロナは落ち着いてきていますが、反面企業環境は厳しい状態が続いています。
とくに、昨今新聞記事で目にするのが、経営体力のない自営業者、零細企業です。
業種で言うと、飲食店や畜産農家さんのうち、とりわけ酪農農家さんの経営難は極めて深刻のようです。
新型コロナや、円安、ウクライナ情勢。これらの要因で飼料価格や燃料費・光熱費の上昇にともない、経営は悪化。
一般社団法人中央酪農会議が2023年3月17日に発表した酪農経営の実態調査では、酪農家の85%が赤字経営を強いられ、そのうち4割以上の農家さんが1カ月当り「100万円以上の赤字」と回答しています。
酪農農家さんの多くは、生活維持のため、家族のため、そして日本の食料基盤の維持のためと頑張っていらっしゃいますが、この急激なコストの上昇割合、そしてそのスピードは、もはや経営努力でどうすることもできないほどだと思います。
破産にいくら必要か?
2021年のブログ(リンク)でもお話をしたように、結論から申しますと、
破産するためには、個人事業主で50万円~、法人形態の場合には法人と代表者をあわせて100万円~資金がなければ、破産すらできません(実際には,消費税,官報広告費用など諸費用がさらに数万円かかります。)。
目安でいうと、個人経営の飲食店で60万円、酪農家さんでいうと山口県内の営農規模だとだいたい100万円はほしいところです。
逆に言えば、手持資金がおよそ100万円以下になる前に破産を決断しなければ、破産もできなくなってしまうのです。
しかし、実際には、なかなか手持ち資金が100万円を下回っても、破産しようという考えに至らない経営者さんが多いのではないでしょうか。
「もしかしたら、補助金がとれるかもしれない」
「この売掛金が入金してくれれば・・・」
ところが、この状態で、税金、保険料、給料などどんな支払でもかまいませんので、数ヶ月以内に支払ができないものが発生しそうだという場合は、まずは、一刻も早くご相談に来ていただきたいのです。
夜逃げでは失うものが多すぎる
破産をためらってしまい夜逃げをせざるを得なくなるのは、多くの場合、この破産にかかる費用を用意できないためでもあります。
しかし、夜逃げをしてしまうとどうなるか・・・。
住民票を移動できなくなります。
行き先を眩ませて夜逃げをするわけですから、住民票を移動できません。住民票を移動すると、銀行・債権者が、後を追ってきます。
では、住民票を夜逃げ先に移動できないとなると、どうなるでしょうか?
□まず、各種証明書を発行できません。
□印鑑証明も取れない。
□そのうえ、国民健康保険も利用できません。健康保険を利用できないということは、病院での治療費も全額自己負担になります。
さらには、自身だけでなく家族の分も同様です。
□新住所での就職、就学が難しくなります。
□新居への入居も、新たに契約を締結するのは難しくなってきます。
なにより
□連帯保証人にも、迷惑をかけ続けることになってしまいますね。
債権者にとっても、破産してくれれば損金処理できるのに、夜逃げされてはそれもできません。債権者に二重に迷惑をかけ続けることになります。
破産VS夜逃げ
もちろん破産をすると、
□新たな借入れ等が難しくなります。
□破産手続中は裁判所の許可なく住居移転や海外渡航ができなくなります。
このような、制限が生じることにはなります。
ただ、これらを比較した時に、従業員や家族、保証人の将来を見据えて、破産をするか、夜逃げをするか、どちらが経営者として下すべき判断なのでしょうか。
その答えは明らかではないでしょうか。
決断のタイミング
そうであれば、いつのタイミングが破産の判断をするべきなのか。
極めてざっくりした表現をすれば、残金100万円を目途に判断をしていただけたらと言うことです。
できれば、200万円を切った段階で早めに相談していただきたいところです。
そうすれば時間的に少し余裕もできて破産以外の選択肢も検討できるかもしれません
ここ最近も下関では飲食店などの閉店が多くなったな、という印象があります。
これらのお店の経営者は無事に店じまいできたのか、自己破産でもしたのかな、夜逃げしたのではないだろうな、と仕事柄余計なことを考えてしまいます。
決断を促せるのはあなた
まずは、お金があるうちに廃業するのが一番です。
取引先に迷惑をかけなくて済みますし、破産をしなくても済みます。
債務整理によって元本カットできなくても分割弁済にして払えるのであれば、その方がベターです。
次に、可能であれば民事再生により破産を回避しつつ債務元本を圧縮して経営を続けることを検討します。
それも無理ということであれば自己破産になりますが、破産をしたとしても、それまでの関係性次第では、たとえば、取引先に就労の機会もあります。
本人が他でも働けるように、はやめに、なのです。
借金で追い込まれて、精神上、健康上の疾患が生じてしまわないように。
周りのあなたこそが声をかけてあげてください。
経営者はえてして楽観的で、頑張り屋さんの方が多いように感じられます。
なかなかご本人では、破産ということすら考えつきません。
だからこそ、このページを見ている経営者の周囲にいらっしゃるあなた。
特に、ご家族、同業者さん、福祉関係者(病院)さん、税理士事務所の担当者さんなど、あなたの声こそが、必要なのです。
あなたの最初の一声が、知人の経営者とそのご家族を守ることにつながるのです。
当事務所でも、そのあなたの勇気ある一声をお待ちしています。