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片山法律事務所

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「ウチの会社、民事再生できますか?」

破産・廃業・借金

破産・民事再生・任意整理と手段は複数ありますが

事業の資金繰りがうまくいかなくなり、このままいくと会社がつぶれてしまうと感じたとき、中小企業の経営者は、いったい何を選択すればいいのでしょうか。

 

今回はその中でも、民事再生について考えてみたいと思います。

 

目次

民事再生と破産の違い

民事再生が進まない理由

それでも民事再生を進めるべき意義

だからこそ、早めのご相談を

でも、正直使いにくい制度。そこで・・・。

 

 

民事再生と破産の違い

事前にある程度ネットなどで情報を調べてから相談に来られる方も少なくなく,「民事再生という方法があって,債務の元本カットができると聞きました。元本カットしてもらえれば再び資金繰りが回るようになるので再生手続を使いたいのですが。」という形でご相談をうけることがたまにあります。

しかし,残念ながら,私のこれまでの経験上すべての案件で破産を選択せざるをえませんでした。

 

民事再生と破産ではどこが違うのでしょうか。

広い意味で「倒産」という場合には両方が含まれ,使える場面は似ています。

 

違いを端的に言うと目的にあります。

民事再生は会社を存続させるのに対し(再生型),破産は、会社を消滅させます(清算型)。

 

民事再生は,広い意味で事業再生の一手段と理解できます。

このご時世のもと,なかなか経営の苦しい会社をまるごと買収してくれるスポンサーを見つけることは難しいですが,同業他社が割とうまくいっている店舗だけであれば買いたいということはそれなりにあります。あるいは,うまくいっている部門だけで従業員が自主経営したいという要望もあるでしょう。

会社自体は消滅したとしても,会社の事業の一部だけでも地域社会にとって有益であれば,そのすべてを破産させてしまうことは地域社会への損失にもなりかねません。

民事再生を単発で使用すると言うよりも,調子の良い事業部門を事業譲渡したり,別会社を設立して切り出したり,いろいろな方法を駆使してもっとも事業の価値を高くできるのはどうすればいいかを考えなければなりません。

重要なことは,会社の再生ではなく,事業の再生と捉えるべきでしょう。

 

会社には取引先があり,従業員があります。取引先会社の経営者にも家族がいて,子どもや家族がいます。従業員にも家族があります。債権者である金融機関も同じです。

会社を経営して雇用を維持することは,取引先・従業員の生活を確保するばかりでなく,その背後にいる子どもや家族の生活・人生まで含めて支えるということです。

たとえ会社はなくなったとしても,事業は残し,できる限りこれら多くの人生を救わなければなりません。それが経営者の最後の責務と言ってもよいでしょう。

 

 

 

民事再生がほとんどない理由

民事再生は,事業再生の手法の一つで,法律に根拠のある強制力のある手続です。元本カットに強制力が生じる点で極めて強力な手続です。

そこで,経済的に苦しい会社をなんとか存続させたい場合には有力な選択肢となります。

しかし,ここ下関という地方都市で開業している弁護士からすると,民事再生がうまく使える事案は多くはありません。

一つの理由は、再生手続きを進めるにあたっても「コスト」(予納金など)がかかるためです。

例えば、ある程度の規模の会社であれば予納金が少なくとも100万円,少し規模が大きくなれば200~300万円を予納金として裁判所に納めなければなりません。

そしてこのほかにも弁護士費用(見込まれる作業量等により増減しますが,100万円~はかかるでしょう。)、そして運転資金を捻出したうえで、債務の一部弁済のための原資が必要になってくるのです。

つまり、この場合だと、申立までに少なくとも一括して200万円以上の現金と,今後3~5年かけて運転資金をまわしたうえで債務の弁済費用の捻出が必要になってきます。

しかし、地方の中小企業の規模では,200万円の手持ち資金があるときに民事再生を考える経営者はそう多くはないでしょう。

二つ目の理由として,民事再生をしたという風聞が立った際に取引先から取引を続けてもらえなくなると運転資金の捻出もままなりません。特に公共事業を収益の柱としている会社では,民事再生により入札できなくなって経営が直ちに立ちゆかなくなります。

刀折れ矢尽き,手持ち資金が尽きて「今月末の銀行の支払いができません。」とか「税金の滞納をしていたら差押えをされてしまい,運転資金のあてにしていたお金がなくなってしまいました。」とかいう直接のきっかけがあってから法律事務所の門を叩き,「もはや自己破産しかありません。あと2年早ければ別の方法もあったのですが・・・。」という話になってしまうのです。

 

   

 

それでも事業再生を進めるべき意義

 

教科書的に言えば,破産よりも少しでも配当率が良く債権者である金融機関にとってもメリットが大きく,他方,会社が存続することにより経営者にとっても地位が保証されので,破産よりも民事再生の方が好ましいとされています。

 

しかし、そうした経済的合理性だけではなく,とりわけ地方経済においては,その会社の地域社会での存在意義とか、地域で多くの雇用を抱えている等、

事業を存続させる地域社会への貢献の面をもっと重視するべきではないでしょうか。

 

逆に言うと、これらの社会的意義がある場合には、経営者は場合によっては会社を手放し,あるいは法人としては消滅したとしても,社会的に意義のある事業を残し,

従業員や地域への社会的責任を果たす必要があるのでは?ということになってきます。

 

 

 

 

だからこそ、早めのご相談を。

 

 民事再生は,広い意味で事業再生の一つの方法です。たとえ会社はなくなっても,地域社会に意味のある事業は存続させることが地域社会にとって重要です。

 

民事再生を選択する場合,手続きを選択するのにも数百万円のキャッシュが必要です。 

その上、再生計画を進めていくうえでは、従業員,取引先,金融機関ほか多くの利害関係者の協力が必要です。

そのモチベーションは、半端なものでは足りません。

お客様、お取引先、地域、会社への熱い思いがなければ、従業員もついてこないことになり兼ねず、再生計画が頓挫してしまいます。

 経営者にその熱意と能力があり,かつ事業が地域社会にとって有用でなければ,再生はままなりません。

だからこそ、早めで、かつしっかりサポートをしてくれる専門集団に早めのご相談をしていただきたいですね!

 

 

でも、正直使いにくい制度。そこで・・・。

 

ただ、そうは言っても民事再生は使いにくい制度であるため,任意整理手続を利用した事業再生の手法が複数設けられています。

 

そのうちの一つとして,事業再生をもっと機動的に行うために中小企業再生支援協議会(2022年4月から中小企業活性化協議会に組織再編)という組織が作られました。

できるだけ多くの事業者を早く支援するため、金融機関、民間の専門家とも連携し、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを推し進めるための制度で、必要に応じて、民間専門家による事業者支援も予定されています。

 

とはいえ、この新制度も、できるだけ「早め」の支援をするための制度です。

事業価値が毀損してからでは再生もできません。時間がたてば立つほど,とれる手段は限られてきます。

事業の再建をお考えの経営者の方には、手遅れになる前にできるだけ早めのご相談をお考えいただけたらと思います。