初回相談から破産手続終了までの流れ(法人・小規模)
前回に引き続き,破産申立をする場合の標準的なモデルケースを想定して流れについて説明します。
今回は,法人(小規模)の破産を想定します。
初回相談 令和3年4月5日
初回は,必ず弁護士が対応します。
借金がどこにいくらあるか,返済状況,財産状況,資金繰りなど諸々のことをお聞きし,債務整理でいけるか,民事再生をする意味があるか,破産申立しかないか,といった方向性を決定します。
個人破産よりも財産状況の把握が重要になります。
直近3年分の確定申告書の写し,金融期間からの借入・リース料債務・労働債務・買掛金などその他の債務債務の一覧表を作って持参いただけると相談がはかどります。
併せて,弁護士費用の説明,裁判所への予納金の見込みなどをお伝えします。
当事務所では,とくにご要望がない限り初回相談で受任することはせず,いったん持ち帰って依頼するかどうかを検討してもらいます。
2回目相談 令和3年4月6日
だいたい初回相談から数日以内に2回目の相談を入れます。
ここで依頼の意思を確認して,ご依頼していいただけるのであれば,委任状,委任契約書に署名押印をもらい,請求書をお渡しします。
併せて,裁判所に提出する破産申立に必要な書類(定款,取締役会決議議事録,確定申告書の写し,その他諸々の契約書類,不動産登記,その他諸々)の説明をして,次回相談時にもってきてもらいます。
令和3年4月8日
3回目の相談は,数日の内に書類をそろえて持参していただきます。
この段階で必要書類はほとんどそろってくるので,その書類を踏まえて弁護士側で裁判所に提出する書類を作成します。
不足書類等がある場合には,引き続き取り寄せをしてもらいます。
法人破産では,破産手続開始決定の申立をするタイミングが非常に重要です。手形の決済日,給料の支払日,売掛金の入金日など諸般の事情を総合的に考慮して申立日を検討します。
今回は,この日から1週間後を申立日とします。
今回は,何らかの事情により申立を急ぐケースを想定していますが,もう事業をやめて休業中の法人・事業者の場合には,個人破産の場合と同じくそんなに急ぐ必要もない場合もあります。
令和3年4月10日
数日のうちに裁判所に提出する書類をおおよそ完成させて,裁判所に法人破産の申立を事前に相談します。取り付け騒ぎなどが起きないよう事前に破産手続開始決定のタイミングを図るなどの目的があります。
これによって,裁判所に納付する予納金のおおよその金額のあたりがつきます。
令和3年4月14日 受任通知の送付
委任を受けた数日以内には,各債権者宛に弁護指名で受任通知を送付します。
受任通知がなされると,債権者からの取立ては止まり,当事務所宛てに債権者からの連絡が入るようになります。
受任通知により取り付け騒ぎにならないよう,速やかに破産手続開始決定の申立を行います。事案によっては,受任通知と同日に行うこともあります。
令和3年4月15日
裁判所に対し,破産手続開始決定申立てをします。
令和3年4月16日
裁判所から指示された金額の予納金を納付します。
併せて,不足書類や不明点の問い合わせなどの補正命令がなされます。原則2週間以内に回答します。
令和3年4月16日
特に問題がなければ,申立から数日内に破産手続開始決定がなされます。
開始決定と同時に破産管財人が選任されます。
以後,破産管財人が財産状況の調査,破産財団の維持形成のために財団に属する財産の換価・管理を行います。
同時に,破産者の関係者(法人なので事実上は代表者,経理担当役員,経理事務など)は,破産管財人の調査に協力する義務があります。
令和3年4月28日
開始決定後になりますが,先になされた補正命令への対応,回答をします。
令和3年7月25日
第1回債権者集会の開催。破産管財人が財産状況を調査した結果を報告します。
小規模な会社の場合,財産の換価・管理によって財団が形成され,配当に至ることはまずありません。
1回の集会で,それ以上調査・換価を続ける必要がないことが明らかなことも多く,その場合には破産管財人から破産手続の終了の申立て(異時廃止申立)がなされます。
令和3年7月26日
異時廃止決定
破産手続を終了させることを廃止といい,破産手続開始決定と同時になされるものを同時廃止,それとは別の時期になされるものを異時廃止といいます。管財事件の場合には,異時廃止となります。
これで破産手続は終了です。もう少し規模の大きな会社であったり,財産隠しが疑われたり,不動産の売却に時間がかかるなど事案の事情に応じて,債権者集会が2回目,3回目,と繰り返されることもあります。
この場合,債権者集会と債権者集会の間は約3か月となります。これが何回も繰り返されると,1年以上かかることもありえます。
法人破産の場合には,少なくとも下関では必ず破産管財人が選任される運用となっています。スケジュール感でいうと,初回相談から最短で3,4か月で終了するので個人破産よりも進行が早いともいえます。
ただし,初回相談から破産申立までのスケジュールはかなりタイトであり,場合によっては徹夜作業での強行スケジュールになることもあります。
法人破産の申立費用が個人に比べて高額になるのは,こうした特急料金的な意味合いがあるのと,財産関係が個人よりも複雑で,どの契約を解除すべきかとか,この代金は支払って良いのかとか,後に破産管財人から否認権行使の対象とならないよう,法的知識を駆使して様々な雑務が発生する意味もあります。
令和3年内の更新はこれで終了になります。
ご覧いただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。