相続は家族の問題だから、自分たちだけで解決? ~相続放棄の後始末~
相続放棄を選ぶ方が、年々増えています。
統計によれば、2015年(平成27年)の約18.9万件から、2024年(令和6年)には約30.9万件へと、急増しているようです。
下関でも件数は増えているように感じます。
「関東に住んでいて下関の実家に関われない」
「空き家や借金がありそうで怖い」
「相続そのものに関わりたくない」
こうした理由で、相続放棄を考えること自体は珍しくありません。
ただ、放棄はしたけれど、その後どうなるのか分かっていなかった
というケースも散見されます。
相続放棄したためにかえって権利関係が錯綜してしまうケースです。
相続放棄は「自分が抜けて終わり」の手続きではありません。
放棄をすると、相続権は次順位の相続人に移ります。
法律相談を担当していると、「全員放棄すれば国がひきとってれるでしょう?」というところまでは知っている相談者は少なくありませんが、どうやって具体的に国に引き取ってもらえるかを知っている人はまずいません。
【具体例】放棄したら終わり、のはずが…
事例
被相続人:祖父
相続開始時の相続人
長男
長女
※祖母はすでに死亡
※長男には子ども3人、長女には子ども2人がいる
ステップ① 長男が相続放棄をした(第1順位の法定相続人)
長男は「借金がありそう」「関わりたくない」と判断し、相続放棄。
この時点では、
長男は最初から相続人でなかった扱い
長男の子ども(孫)に相続権は移らない
相続人は 長女1人 になります。
ステップ② 長女も相続放棄をした(第1順位の法定相続人)
長女も、
「実家が遠方」「空き家の管理ができない」という理由で相続放棄。
すると、相続はここで終わりません。
ステップ③ 相続権が曾祖父母へ(第2順位の法定相続人)
祖父の両親はすでに死亡しているため、第2順位の法定相続人は存在しません。
ステップ④相続権が兄弟姉妹へ(第3順位の法定相続人)
祖父の兄弟姉妹に相続権が発生します。
祖父には兄が2人、妹が2人います。
そのうち、妹1人は存命ですが、他はすでに死亡しています。
兄にはそれぞれ子が3人ずつ、死亡した妹には子が2人います。
兄弟姉妹の相続の場合、一代限り代襲相続が発生するため、存命中の妹のほか、死亡した兄2人のこども計6人、死亡した妹の子2人も相続人になります。
相続放棄する場合には、これら全員(妹、上の兄の子3人、下の兄の子3人、妹の子2人の計9人)が相続放棄をするかどうかを決定し、相続放棄の手続きが必要になります。
ここまで来ると、
相続人が何人いるのか分からない
連絡が取れない人が出てくる
戸籍が膨大になる
という状態になり、個人での対応は非常に困難になります。
なぜ、こんなに複雑になるのか
理由はシンプルです。
相続放棄は、
「相続をなかったことにする」制度ではなく
「相続権を次の人に回す」制度だからです。
放棄をすると、
次順位の相続人に順番が移るのです。
この出口を考えずに放棄すると、相続関係は一気に絡まります。
まとめ:相続放棄は「出口」を見てから判断を
相続放棄は簡単な手続きに見えて、
実は「その後」を考えないと厄介な制度です。
誰まで相続人になるのか
誰に影響が及ぶのか
最終的に相続はどこで止まるのか
ここを整理せずに「とりあえず放棄」すると、
かえって家族や親族を巻き込む結果になりかねません。
これを整理しないまま
「とりあえず放棄しておこう」
と進めてしまうと、
遠方の親族に迷惑がかかる
家族関係がこじれる
といった事態になりかねません。
また、相続の問題は、借金だけではありません。
山林や空き地などの不動産
賃貸住宅の原状回復費用・清掃費
遠方の自治体から届く税金や保険料の請求
事業に関係する未整理の債務
特に、商売をされていた方の場合、
「どこに、どんな負債があるのか分からない」まま相続が始まることも多いのが実情です。
こうした不安がある場合には、
相続人全員の関係を整理したうえで、
まとめて放棄手続きを進めることが重要になります。
当事務所では、
・遠方のご家族との連絡調整
・来所不要での手続対応
・相続関係の調査から放棄までの一括支援
にも対応しています。
相続放棄を考えている方は、
手続きを急ぐ前に、一度立ち止まってご相談ください。
「放棄していいのか」
「放棄するなら、どこまで整理する必要があるのか」
その判断から、お手伝いします。

