読み込み中

片山法律事務所

お知らせNews

おじさんが亡くなって、連絡が取れない親戚がいるのですが・・・

相続

 相続と言えば「争続」(争う問題)というイメージが以前は強かったのですが、最近増えているのが、争う争わない以前の問題です。

そもそも、どうやって話を進めればいいのか途方に暮れるという場面に出くわします。

実際に話し合いに入れればそれほどもめないのに、話し合いをしたくてもできないのです。

 

相続人がどこにいるのか連絡先がわからないという問題、そして見つかったとしてもその相続人と話し合いができないという相談を受けることが増えてきています。

 

たとえば、100歳になった被相続人(姉)が亡くなって(大往生ですね)、子どもがいないため相続人が兄弟姉妹になる場合、兄弟姉妹が5人いて、そのうち3人が既に死亡していて、残り2人も既に90代となっていて、認知症のため施設に入っているようなケースがあります。

まず、住民票を移していなければ、どこの施設に入っているのかがわかりません。

それまで連絡を取り合っていなければ、もちろん電話番号も分かりません。

 

今回の相談も、そもそも相続人が見つけられないという問題です。

 

子どもがいない伯父(98歳)が亡くなったのですが、その伯父の兄弟と連絡がつかないというケースです。

昔の人は、お子さんやご兄弟や多く、高齢化に伴い相続人も高齢化しており、相続人が80代、90代ということも少なくありません。

兄弟姉妹が既に死亡している場合には、代襲相続が発生して甥姪が相続人になりますが、今の時代では日本全国に相続人が散らばっており、場合によっては海外にいる相続人とも連絡を取らなければなりません。海外では住民票を追いかけることも至難の業です。

 

 

まず、すべての相続財産について、遺言によって亡くなられたお父様の意思が明記されていない限り、残された相続人全員がそろって遺産分割協議をしないと、その遺産分割協議は無効になります。相続人が一人でも漏れていたら、その遺産分割協議は無効になります。

 

この、すべての相続財産について、というのがカギです。

すべての財産を包括的に相続させる遺言や包括遺贈があれば別ですが、大抵漏れがあります。包括遺贈などは遺留分侵害額請求という別の問題を引き起こすことも予想されます。

漏れていた財産は、漏れが見つかった段階で改めて遺産分割協議が必要です。

 

そして、遺産分割には、時効がないのです(このたび、不動産登記については一定の時間制限が求められるようになりました。)。

 

したがって、本ケースの場合、亡くなった伯父の兄弟姉妹(死亡している場合にはその代襲相続人)を見つけ出し、連絡できるようにしないとなりません。

核家族化が進展している今の時代、親族とは言っても伯父叔母と密に連絡を取り合っていたり、ましてイトコの連絡先を全員知っているような親族はかなり少ないはずです。

 

そこで、この場合、連絡が取れない伯父叔母・いとこと連絡を取っていく手法が次の課題になってきます。

 

0.その前に…

 

連絡が取れる相続人だけで、おじさんの現預金を使うことはできません。そもそも、預金は、銀行が引き出しに応じてくれないでしょう。

ただ、現在は相続法改正で、民法909条の2に基づく遺産分割前の相続預金の払戻し制度というのが新設されています。これを使って、相続人は一部を引き出せるというようになっっていますので、葬儀代金やさしあたりの生活費として相続人が利用できるようにはなっています。

 

ただ、これもあくまでも一時的なものです。

 

そこで、根本的には、連絡が取れない伯父叔母・いとこと連絡を取っていく手法が次の課題になってきます。

 

 

1.戸籍謄本を取り寄せる

 

あなたは被相続人の甥という立場の相続人とします。

連絡が取れない相続人がいる場合であれば、まずは自分の戸籍をとりよせ、そこから戸籍を遡り、親の戸籍、親の戸籍から祖父母の戸籍、祖父母の戸籍から伯父(被相続人)の戸籍につながるよう戸籍を取り寄せます。続いて、被相続人である伯父の生まれてから亡くなるまでの戸籍を全部取り寄せます。戦前の戸籍であれば家督制度がありましたので、さらに先代の戸主の戸籍にまで遡らないと行けない場合もあります。

そこから、今度は他の兄弟姉妹に戸籍をたどります。戸籍は各市町村が管理していますので、一つの市役所でとれるとは限らず、日本中の市役所・町役場・区役所に散らばっているかもしれません。それを一つ一つ根気よく集めなければならないのです。

 

もちろん、実際に現地の役場に行けば取り寄せはできますが、通常は郵便で請求します。

 

事案によっては、戸籍を全部集めたら、電話帳一冊くらいの厚さになることもあるほどです。

 

このような膨大な手続きを踏んでようやく、相続人は、他の相続人現在の本籍地を知ることができるようになります。

 

2.戸籍の附票の取得

 

次に、本籍地がわかっても、そこに必ずしも住んでいるとは限りません。

実際に、本籍地に住民票をおいていない場合も多いですよね?

 

そこで、戸籍の附票を取得していくことになります。

 

戸籍の附票とは、新しく戸籍を作った時以降の住民票の変遷を記録したものです。

戸籍簿とセットで本籍地の市区町村で管理されています。

 

これで、ようやく、お姉さまの現住所を把握できるようになります。

 

ここまで事案によっては2か月くらいかかることもあります。

 

3. まずは手紙から

 

そのうえで、今度は書面を送付します。

 

いきなり事前の告知もなく訪問するとびっくりさせてしまって、その後のスムーズな話し合いができないかもしれません。今のご時世では、「どうやってうちの住所を知ったのか?」とお怒りの言葉をいただくことも少なくありません。ですので、できるだけ丁寧な手紙で経緯をご報告していきたいですね。

 

では、今後を見据えて、手紙に何を書けばいいか、ですよね。

例えば、私が作成するとしたら、こんな感じでどうでしょうか。弁護士名で作成する場合には、もう少しカッチリした文章を作成します。

 

 

〇〇様相続人 各位

(季節の挨拶) 

突然お手紙を差し上げるご無礼をお許しください。

私は山口県下関市○○の田中太郎と申します。○年○月×日、○○様がお亡くなりになりました。心よりお悔やみ申し上げます。

 

さて、今回お手紙を送らせていただいたのは、○○様の遺産分割のことです。

 

私が調査したところ、○○様の相続人は、○○様(法定相続分○分の○)、××様(法定相続分○分の○)、△△様(法定相続分○分の○)・・・・の合計○人であることが判明しました。

遺産分割協議は、相続人全員の協議が必要です。

 

現在判明した○○様の相続財産は、同封の財産目録に記載のとおりです。

私としては、家族の結束を守るためにも、皆様と共に遺産の公平な配分に取り組みたいと願っています。

 

この件につき○○様のご意見を伺いたいので、恐れ入りますが、お忙しい中恐れ入りますが、ご連絡いただけますと幸いです。

                                                              敬具

あなたの名前

あなたの連絡先

 私の連絡先:住所

      電話番号

 

4. それでもわからない場合

 

ただ、住民票がそこにあっても、

たとえば、施設に入っているなどで、

実際には、そこの住所に本人がいないケースが多いのです。

 

こうなると、探偵、調査会社に協力してもらうしかありません。

 

それでも不明で、郵便物も宛名不明で数回返ってくるようなときには、話し合いすらできないのですから、法的手続の利用が必要です。家庭裁判所に対し、遺産分割調停を申し立てます。

 

ここまでで半年から1年くらいかかるかもしれません。

 調停を申し立てた後も、成年後見人の選任が必要な場合、不在者財産管理人の選任が必要な場合、特別代理人の選任が必要な場合など、依頼を受けた弁護士も頭を悩ませるケースも少なくありません。こうなってくると、相続人ご本人では手続ほぼ無理ですから、弁護士に依頼するべきでしょう。

難しいのが、弁護士に依頼すると、弁護士費用は依頼人の負担になります。ということは、依頼しないで誰かが弁護士に依頼して遺産分割調停を申し立てるのを待つだけの手抜きをした相続人は手出しがなく遺産をもらうだけで、がんばって動いた相続人だけが弁護士費用を負担する、という不公平な事態が生じる場合もあります。そこは調停に代わる審判などで、法定相続分どおりに分割するのではなく、多少傾斜配分した遺産分割ができるよう主張を尽くすなど、工夫も必要になるでしょう。

 

5. お早めにご相談を

このように現在では相続人間で、争う・争わない以前の問題として、相続人をそもそも見つけられないという問題が多く発生してきています。

 

見つかったとしても、その先には調停手続きも控えています。

 

次のステップにいち早くすすむためにも。

 

弁護士にに早めにご相談をされてみてはいかがでしょうか。

ただし、早めにご相談をうけても、これまで述べたように、弁護士側でもどの制度を使えばいいのか、その制度を使うためにまた新たな調査が必要になるなど、手間と時間がかなりかかります。「依頼したのに、なぜ進まない!」とお怒りになるお気持ちは理解できますが、それほど簡単には進まないものだということはご理解いただきたいと思います。