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片山法律事務所

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もしも親が認知症になったら? 成年後見(3) どのような場合に成年後見人の選任を求めるべきか?

成年後見

4 どのような場合に成年後見人の選任を求めるべきか
(1)被後見人名義で契約・手続をする必要がある場合
 例えば,不動産を所有している人が判断能力が低下した場合,その土地を売却しようとしても,売買契約を締結することができません。地方にある山林の一部が道路建設用地にひっかかったので売却したいが,所有者が既に認知症になっていたという事例を耳にしたことがあります。

 銀行預金をおろすことも,本人が認知症になってしまえばできません。金融機関は,本人の判断能力が低下していることに気づいた場合,たとえ身内が付き添っていたとしても,預金の引き出しには応じてくれません。従来の長閑な時代には金融機関も手続に応じてくれたかもしれませんが,今は金融庁から厳しく法令遵守を指摘されている時代です。どんなに頼んでも,金融機関は預金の引き出しに応じてくれないし,応じてはならないのです。

(2)遺産分割協議をしたいが,共同相続人中に認知症の方がいる
 今日では平均寿命が延びたこともあり,相続は,高齢者から高齢者になされることが通常です。子どもがいなくて兄弟姉妹に相続される場合にはなおさらです。
 そこで,相続が発生する場合にかなりの確率で相続人に高齢者がいることになります。すると,必然的に相続人にも認知症の方が存在する可能背が高まります。
 遺産分割協議は,すべての共同相続人が参加しなければ無効です。成年後見が必要になるほど判断力が低下すると,例えばご兄弟で相続があった場合に遺産分割ができず宙に浮いてしまう場合があります。その際に,成年後見人を選任したうえで,遺産分割協議をすることになります。

(3)被後見人を消費者被害から保護する
 訪問販売等の高齢者を狙った消費者被害が後を絶ちません。金塊,羽毛布団,床下乾燥機,屋根工事,浄水器,呉服,新聞定期購読,健康食品など,その時々の社会の流行によって形は変わりますが,いずれも不必要なものを大量に買わせるものです。
 成年後見人が選任されていれば,お金は成年後見人が管理しているので,たとえ被後見人が騙されたとしても,お金は失わずに済みます。成年後見人は,契約取消権をもっているので,お金を出す前にもととなった契約を取り消してしまえば,消費者被害から被後見人を守ることができます。

(4)施設入所契約をする

 自宅での生活が難しくなり,介護施設に入所する際には,入所契約が必要です。身の回りの世話をする親族がいれば,通常はその親族が契約の当事者となりますが,そのような親族がいない「おひとりさま」の場合には,自分自身が契約当事者にならないといけません。しかし,既に契約当事者となる能力が失われている場合には,契約当事者となることはできません。そこで,成年後見人に入所契約を代理してもらう必要があります。

 

(5)その他
 その他にもいろいろな事情がありますが,親族間で誰がお金を管理するかについて話し合いがつかないため,中立的な第三者として専門家を成年後見人に選任するということもあります。
 また,親族の一部が被後見人の財産をほしいままに費消してしまう虐待(経済的虐待)のケースもあります。成年後見人が被後見人の財産を管理することで,虐待状態から脱することができます。

 

 ただ漠然と「認知症になったから成年後見人をつけなければならない。」というものではありません。いったん選任されると原則として本人が死亡するまで成年後見事件は終了しません。成年後見人を選任して何をするか,という見通しが重要です。その見通しを,適切に家庭裁判所及び成年後見人に引き継がなければ円滑な業務遂行ができません。成年後見人選任の申立手続を経験豊富な弁護士に依頼することは,この引継ぎを円滑に行う最良の方法です。